脳の中の二つの意思決定のシステム(直感と熟考)

Intuition and Deliberation: TwoSystems for Strategizing in the Brain

science.sciencemag.org


ヒトにはよく考えて論理的に意思決定する場合と,感情や直感を頼りに意思決定する場合の2つの意思決定の方法があるとする,dual-process仮説がある。

このScienceの論文では論理的な思考が必要なdominance-solvable gamesと直感的に解く必要があるpure coordination games中の脳活動の違いをfMRIを使って調査した。

そして,the middle frontal gyrusとthe inferior parietal lobule, the precuneusは論理的な思考ゲームでより活動し,the insulaとthe anterior cingulate cortexは直感的なゲームでより活動していた。また,precuneusはeffortfultと相関し,insulaはeffortlessと相関した。

Dominance-solvable gamesとは推論を重ねることで答えに辿り着ける課題で,Coordination gameは推論の使用が無く直感で答えるしかない課題になります。
さらに,この論文ではNumber-gameとBox-gameの二つの条件を使って(同じ課題の1次元版と2次元版くらいの違い),課題の汎化具合も調査しています。


なんかCoordinationゲームはめちゃくちゃ単純で,相手が選んだものと同じものを選ぶという推論のしようが全くないゲームなんですけど,dominance-solvable gamesはいまいちわかりづらい気がしました。抜き打ちテストのパラドックスみたいな感じで,推論の結果正しい答えに行きつくのかがよくわからなかった・・・

抜き打ちテストのパラドックス - Wikipedia


The middle frontal gyrusとthe inferior parietal lobule, the precuneusは所謂Fronto-parietal networkとかの脳領域で,the insulaやthe anterior cingulate cortexは所謂Salience networkと呼ばれる脳領域です。

ということで,この論文で言いたいことは,Intuition and Deliberationという意思決定が別の脳内プロセスで行われていることを示唆しているわけです(同じ脳内プロセスの強弱とかじゃなく,異なる脳領域がそれぞれの意思決定を担っているということ)。
個人的には,直感と熟考の計算モデルを使って,実は同じモデルのパラメータの強度が違っているだけとか,数理モデルとしては実は一つで説明できるとかになった方が面白いんですが,全然そんな数理モデルは思い浮かばないです・・・
異なる脳領域がプロセスに関わっていると言っても,二つの課題での比較での強弱なので絶対値ではないですし,一つの意思決定の数理モデルで二つの課題の行動を説明出来,そのパラメータと脳活動の強度を調査することで,実は同じ脳内メカニズムなのだ!とか言えそうな気もするけど。

最近だと,複数の選択肢がある場合かつ時間制限などがある場合での最適な意思決定の数理モデルとかが提案されているから,直感はこれの時間制限がきつい版とか,もう少しベイズ的に,事前分布による意思決定が直感で,尤度も含めたうえでの意思決定が熟考とかはあり得そうかもしれない。

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