エリートアスリートは視覚情報だけじゃなくて運動感覚(運動共鳴?)も使って予測を行っている??

Action anticipation and motor resonance in elitebasketball players
https://www.nature.com/articles/nn.2182

この研究では2つの実験を通してエリートアスリートの優れた予測が視覚情報に加えて運動のキネマティクスを使用していることに起因していることを示す。

1つ目の実験では,エリートアスリート10名,目の肥えた人10名(Expert wachers: コーチ5名とジャーナリスト10名),素人10名がバスケットボールのフリースローの結果予測をして,その成績をグループ間で比較。

2つ目の実験では,バスケのフリースロー(バスケ動画)とサッカーのPKの動画(サッカー動画),そしてバスケのフリースローをしている人が止まっている写真(静止画)を見ている時に,single-pulse TMSで運動誘発電位(手の全体あたり[ADM]と前腕[FCU]で記録)を計測して比較

著者らは二つの予測を立てて検証をした。

予測1:エリートアスリートは,素人だけでなく目の肥えた人たちよりも優れた実験1において優れた予測能力を示す

予測2:エリートアスリートは,他の人たちに比べて,バスケ動画に対してのみ運動誘発電位を増加させるだろう(ダンスの先行研究などから予測される活動?)

 

実験1の結果
エキスパートはボールが投げられる前における予測の正答率が目の肥えた人や素人に比べてはるかに高かった(動き出してから426ms時点での正答率は30%を超える,目の肥えた人は13%くらい,素人は5%くらい)。

実験2の結果
3つの条件と3つの群,そして2つの筋のthree-way ANOVAそして,条件のメイン効果と条件と群の交互作用が有意だった。
まず,郡内での比較ではエリート群ではサッカー動画と静止画に比べて有意にバスケ動画の時に運動誘発電位は高かった。素人群では静止画に比べてサッカー動画とバスケ動画では高かったが,サッカー動画とバスケ動画で違いはなかった(腕の運動誘発電位を取ってるのにここに違いがないのは違和感あるけど・・・)。しかし,目の肥えた人達はエリート群と同じ結果だった。群間での運動誘発電位の違いは見られなかった。

次に,バスケ動画を成功と失敗の2条件,そして動画の長さを3条件(568ms, 781ms, 1207ms)も加えて4条件(群,筋肉,成否,動画の長さ)でANOVA解析。
4条件の交互作用を確認。次に,2つ(筋肉)のthree-way ANOVA(群,成否,動画の長さ)を行ったところ手のひらにおいて3条件の交互作用を確認。このあと3つ(動画の長さ)の2-way ANOVA(群と成否)を行う。
781msの動画において群と成否の交互作用を確認。エリート群における運動誘発電位が失敗時の方が成功時に比べて有意に高かった(素人や目の肥えた人では確認できず)。781msというのはボールが手から離れた瞬間に動画が止まる長さ。手のほうのみでこの結果が出たことが重要のようで,781ms時のボールが手から離れる時の指の角度が成功時と失敗時において有意に違っていたとのこと。

なんとなく釈然としないのは,成功時の運動誘発電位よりも失敗時の方が大きいというのはどういう解釈をしたらいいんだろうか・・・(というかFigure3の印象は成功時の運動誘発電位が低下してる)
なんか予測にキネマティクスを使ってて,ミラーニューロン的な役割を使っているのならむしろ失敗時には活動しないというsensitivityがあるほうが自然な気もする。
Discussionで著者らも,バスケ動画特異的な運動誘発電位の結果を以下のように述べてるしな~
"Therefore, the observation-relatedincrease of neuronal activity in the motor system was selective for the observation of highly learned andpracticed actions. "

失敗時に活動が増加していることに関しては以下のように述べられてるけど,失敗時に増加してるのか,成功時に低下してるのかは今回の結果からはわからないので(Figure3では確かに失敗時に運動誘発電位が正ではあるんだけど,568msと1207msでは成功時にも正なのが781msで特異的に低下しているように見える),この解釈はどうなんだろうか。
"Thus,observation of erroneous performance brought about a specific increase of motor facilitation for the elite athlete group, for the hand muscle more directly involved in controlling the ball trajectory and forthe instant at which the ball left the hand."

あともう一つ気になったのが,4-way ANOVAからの流れで検定が死ぬほど出てきて,多重検定をどうしたかの記述が見当たらなかったのだが,どこかに書いてあるのだろうか・・・

追試が必要な気もするけど,バスケのプロとか呼んでこれないしな(笑)
言わずと知れた有名論文をM1ぶりに読んでみたけど,論文の読み方とかの成長を感じれてよかった。なんなら研究を初めて一番最初くらいに読んだ論文じゃないかな?