テニスなどの連続的な運動が不安によって阻害されるのはdorsal anterior cingulate cortexの活動が原因

題名:Activity in the dorsal ACC causes deterioration
of sequential motor performance due to anxiety
https://www.nature.com/articles/s41467-019-12205-6

この研究は3つの実験で題名のようなことを明らかにしている。

1つ目の実験では,連続的な運動を部分的にまず学習して,それを繋げるように学習した群と(part-learner),最初からすべてを連続的に学習した群(single-learner)では,間違えたら電気ショックを受ける不安条件での課題成績が異なる。連続的な運動を繋げるように学習した群では,そのつなぎ目での成績が統制群に比べて有意に低下したという行動実験の結果。

2つ目の実験では,このつなぎ目の時間の時のdorsal anterior cingulate cortex (dorsal ACC)の活動がpart-learnerとsingle-learnerでは異なり,part-learnerの方が良く活動していたというfMRIの結果。
またpart-learnerでは,dACCの活動はショックを受けた回数と性の相関を示し,singe-learnerでは負の相関を示した。

"These findings suggest a context-dependent effect of dACC activity on motor sequence performances that caused DSMPA in part learners, but performance facilitation in single learners."とのことだが不思議なことだ。

2つ目の実験ではdACCの活動はジャンクションでの時間が遅くなったから不安になって生じたのか,dACCの活動があったからジャンクションでの時間が遅くなったのかがわからない。そこで,3つ目の実験としてdACCの活動をrTMSで阻害したらどうなるかを検証。結果は,dACCの活動をrTMSで阻害したら,ジャンクションでのパフォーマンスの低下が消え去った。統制群ではTMSと頭の間にプラスチック版を挟んで刺激をする音とか場所は同じだが効果が出ないようなSHAM群を使っている。

以上の3つの研究から,連続的な運動を部分部分で学習し,それを繋げるように学習した場合,不安の条件下ではそのつなぎ目の部分で特に影響を受けて,連続的な運動が崩壊する。不安が運動パフォーマンスに及ぼす影響は,単体に対するものと,この研究で示されたつなぎ目の部分への影響という異なる二つがあるだろうとのこと。その原因は不安とかかわりがあると言われる脳領域dACCの活動であった。
rTMSは不安の感知そのものを低減したのか,それとも不安に対する運動への感度が低下したのか,わからないみたいです。

この研究を無理やりテニスに関連付けるとすれば,フォアハンドとバックハンドを別々に練習して,それを繋げるようにポイントパターンを練習するより,最初からフォアハンドとバックハンドを含めてポイントパターン練習をする方が良いということか?
でもそうすると,今度はそのポイントパターンでしか使えないフォアハンドとバックハンドになってしまって他のポイントパターンでのフォアハンドやバックハンドへの汎化がどうなるかとか気になる。


もしくは,そのようにバラバラな学習になるのは避けられないから,dACCの活動を抑えるようなニューロフィードバックトレーニングとかをしてみるか?
色々複雑すぎて,どういうストラテジーでトレーニングすれば良いかはわからないけど,試合中のポイント間にrTMSを打てば,何らかの効果はありそうだ(笑)