高校の頃に野球漬けだとメジャーリーグでの怪我の回数が増え,試合に出る回数が減るという結果は本当??

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191109-00010001-baseballc-base
Yahooで面白そうな記事を見つけました。

小さなころ(高校のころ)に野球しかやっていなかったメジャーリーガーと,複数のスポーツをやっていたメジャーリーガーでは,野球しかしてなかったメジャーリーガーのほうが出場試合数が少なく,酷使による怪我が多かったという結果(結果の解釈には注意が必要そうです)。

 

元論文は以下。

Early Sports SpecializationIs Associated With Upper ExtremityInjuries in Throwers and Fewer GamesPlayed in Major League Baseball

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31384622


2008年~2016年の間にドラフトで1位または2位指名選手の中で,少なくともメジャーマイナー含め,試合に1回出た選手746名を対象としている。高校時代に野球以外のスポーツを一つでもやっていた選手をmulti-sport athletes,野球しかしていなかった選手をsingle-sport athletesと定義。
この選手群の間で,マイナーリーグ含めた怪我,故障者リストに入った日数,マイナーとメジャーを含めて試合に出た回数などを比較した。
746名中240名(32%)がmulti-sport athletesで506名(68%)がsingle-sport atheletesであった(この時点で結構驚き!!日本だと高校野球してる人はmulti-sportの人なんてほとんどいない気がする!)。

multi-sport athletesのほうが,試合に出た回数,メジャーの試合に出た回数が有意に多かった。また,single-athletesの方が上肢の怪我の率が有意に高かった。Single-athletesの中でも特に投手はさらに肩や肘の怪我をする人の回数が多かった。

でもTable3を見ると,そもそもsingle-sport athletesは投手の割合が52%,multi-sport athletesは投手の割合が41%と,投手の割合が違うようだ。

これって結構大事なポイントで投手は先発だった場合1週間に1回しか試合出なかったりして,野手とは試合に出る頻度が圧倒的に違う。そら上肢の怪我の回数は多くなって,試合に出た回数は少なくなるでしょ(笑)
ということで,Table 7は投手の中だけの肘と肩の怪我の割合を示していて,これが75%と56%で有意に違うとのこと。まぁここは大丈夫かなと思ったら,Table7も怪しい。

Total shoulder and elbowはsingle-sport athleteの投手だけで,Elbowを怪我した人数40人とShoulderを怪我した人数46人を足した86人,multi-sport athleteの投手は,Elbowを怪我した人数14人とShoulderを怪我した人数13人を足した27人で,この数値で統計検定してるけど,肩も肘も壊した人もいるんじゃないの??
肘と肩を別々に自分でFisher's exact testしてみたら有意じゃなかったのだが・・・
肩を怪我した人と肘を怪我した人が本当に独立ならこの結果は間違いじゃないかもしれないが,記述が無いので何も言えない・・・(あと,自分がtableの数字からMATLABのFisher's exact testで計算して出てくるp値とまぁまぁ違うのが気になった。論文にはSPSSを使ったと書いてあるけど,MATLABSPSSの違い??)


ということで,Yahooで見て面白そうだと思って,元論文を読んでみましたが,あんまり信用が出来なさそうな結果でした。
気になった点は,

①single-sport athleteはmulti-sport athleteに比べて出場試合数が有意に少ないという結果の解釈

single-sport athleteとmulti-sport athleteで試合出場の数が違うという結果は,single-sport athleteとmulti-sport athleteの全選手で統計検定した結果で,全て投手の割合で説明できそうだということ。

②multi-sport athleteはsingle-sport athleteに比べて怪我が多いという結果の解析方法

身体の部分に分けた解析では,Total shoulder adn elbowという数値でFisher's exact testを行っているが,これは単純に肩を怪我した人,肘を怪我した人を足し合わせたものになっていて,本当に重複が無いのかに関して記述が見当たらないし,定義がいまいちわからない。部位を個別に見た場合は有意ではないので(MATLABで計算してみた),重複があるのであれば結果の信頼性は低い。本当に重複が無いのであれば,上肢の怪我という風にTotalでまとめるのは僕的にはありなので良いのですが・・・

 

 

これらはあくまで僕が論文を読んでみた感想で間違いなどがあれば指摘してもらえると嬉しいです!

The Orthopaedic Journal of Sports Medicineという論文,一応impact factorが2.6くらいあるちゃんとした論文ぽいのになー
でもこれがYahooニュースになっちゃってるので,小さいころには色んなスポーツをやらせよう!!って人たちが出てくるんだろうな・・・うーん・・・