機能的結合ニューロフィードバック

ようやく一本目・・・
https://academic.oup.com/…/Connectivity-Neurofeedback-Train…
2017年6月21日付でようやく筆頭著者の論文をCerebral Cortex誌にpublishすることが出来ました。
Open accessなので皆様ぜひ。


研究内容を簡単に説明すると,脳はいくつかの機能的に異なる脳領域に分かれていて,脳領域間では色々と情報のやり取りが行われています。
今回はreal-time fMRIという装置を使って,この脳領域間の関係性を変えることによって,ヒトの認知機能にまで変化を及ぼせるかどうかを調査した研究になります。
先行研究では,情報のやり取りを増加させられるということはわかっていたのですが,じゃあ減少させることは出来るのか?情報のやり取りを変化させることで認知機能にまで変化を及ぼせるかどうかというのはわかっていませんでした。
今回は,脳領域間の関係性を両方向(情報交換の増減)に変化させられること。脳領域間の関係性を変えることで認知機能にまで変化を及ぼせそうだということがわかりました。
初めての実験が2013年の10月やったみたいなんで,苦節ほぼ4年?(笑)
初実験の時はちょうどASCONEに参加させてもらった時で,ASCONEの合宿所で共同研究の先生から結果が送られてくるのをワクワクしていたのを今でも覚えています。
それからは,まぁ全然思うような結果が出ないことが続き,2年くらいたってようやくそれっぽい結果が出てくるようになって論文を書き始めて,初めてのrejectを経験して,この度ようやく・・・
長かったぁ( ;∀;)
先週に報道発表も行わさせていただいて,8月7日付の京都新聞の夕刊にも取り上げていただきました。
本当のところを言うと,注意力が向上したとまでは言えないというのは報道発表の際にお伝えはしたのですが,メディア側としてはこのほうが伝えやすいとは思うので,多少しょうがないかなと思う部分はあります。
NHKの取材もあったのですが,いかんせん台風で甲子園が延期やらニュースの題材には困らなさそうなので,お蔵入りしそうな気もします(笑)
関西限定だと思いますがNHKで見かけたってかたは教えてくれると嬉しいです(笑)

 

日経新聞にも取り上げていただきました。

www.nikkei.com


海外のサイトでも取り上げられ始めていてうれしく思います(全部全く同じ文章)。
https://www.eurekalert.org/pub_releases/…/abic-mbn073117.php
https://medicalxpress.com/…/2017-08-brain-network-cognitive…
http://healthmedicinet.com/i/manipulating-brain-network-to…/

 


さらに論文がacceptされてすぐに,peer reviewのお願いも来て,ようやく研究者の一員になり始めたような気がします。
博士号取得まであとひと踏ん張りです。
あ,論文accept前に提出した海外学振はダメでした・・・
やはり筆頭著書0では業績欄が平均以下で,acceptがあと1月早ければ!!と思うところはありますが,自分の仕事が遅いことが原因ですのでまた頑張ります。

 

論文の中で7点で計算した相関値をfeedbackしていることについて,7点で計算された相関値は分散が大きすぎて,正しい情報をフィードバックできていないのではないか?という批判について

批判に答えるために簡単なシミュレーションを行ってみました。

確認すべき点は,被験者が正しい脳の状態(例えば,結合を増加させる群では被験者の元々の相関値よりも高い相関値を示す脳状態)を誘導できた場合に報酬がフィードバック出来るのかという点です。

ここでは被験者が様々な脳状態(様々な相関値(-1:0.1:1))を誘導できた際の脳活動の時系列データを作成してみて,その時系列から7点を取り出して相関値を計算した場合に,どのくらいの確率で正しい脳状態の場合に報酬をフィードバックできるかをシミュレーションしました。

例えば,被験者の元々の相関値を-0.1だとして,被験者が相関値0.3の脳状態を誘導できていた場合に7点で相関を計算すると,相関の推定値は-0.2とか0.4とか大きくばらついて推定されてしまいます。相関値0.3の脳状態を誘導できていたのに,相関値が-0.2などと推定されてしまった場合には報酬がもらえないので学習が進みません。

今回,この試行を何回も繰り返した時にどの程度の割合で報酬をフィードバックできたかを計算しました。
その結果,被験者が相関値0.3の脳状態を誘導出来た場合,80%以上の確率で報酬を与えられました。これが相関値0.2の脳状態を誘導した場合には75%,相関値0.1の場合には67%くらいにまで下がりはしますが,ある程度正しい方向にバイアスして報酬を与えることは出来ていると考えられます。
なので7点の相関値の推定値の分散が大きくても,ベースラインよりも相関値が高い脳状態を誘導できた場合(結合を増加させる群の場合)に,正しい方向にバイアスして報酬をフィードバック出来ていることが学習につながったのではないかと考えられます。

このことからも原理的には学習は可能であると考えられます。

 

しかし,今のままでは効率的な学習方法ではないのは明らかですので,現在は実験方法を改良しています。計算に使用する点の数は多いほうが良いのですが,点の数を多く確保しようとするとその分フィードバックに時間遅れが生じてしまうというトレードオフがあります。現在はマルチバンド撮像法や,少しフィードバックに時間遅れが生じても良いので相関を計算する点の数を多くして実験を行っています。