卓越研究員事業について
【卓越研究員事業について】
国がお金を出すので,企業や大学が卓越研究員を雇えるポスト(基本的に無期限雇用か,テニュア)を用意.
申請者は,今後10年間で取り組みたい研究について研究計画を立てて,申請書を書く.そして,公募されているポストの中からいくつかを選ぶ.
雇う側と雇われる側の希望が一致した場合に,雇用関係が結ばれる.
基本的には若手研究者の不安定な雇用対策なので,じっくり腰を据えた研究が出来るようになりそう・・・
平成28年度の4月~5月に基本的に博士学位取得者が応募できて,150名程度が採用予定のようです.
公募されているポストを見てみたら,企業系はやはりビッグデータとか機械学習とか出来る人材を欲しているみたい.
今年の動向を見たうえで来年には視野に入れて考えないとな.
なんにしても選択肢が増えるのは良いこと.
卓越研究員事業(Leading Initiative for Excellent Young Researchers(LEADER) ):文部科学省
囲碁の次は??
イセドル対アルファ碁のNatureのまとめ記事です.
この記事ではすでにDeep Mind社が,囲碁の次は何をするかということに焦点を当てています.
完全情報ゲームで最も複雑な囲碁がAIによって解かれてしまった今,この記事で次に来るものとして3点あげています.
①不完全情報ゲーム(例:複数人でのポーカー)
相手の手札が何かわからないので不完全情報ゲームという.
不完全情報ゲームでもちょっと前にScienceでポーカーの必勝法がわかったという論文も出ましたが,まだ複数人でのポーカーなどのような複雑な不完全情報ゲームになると困難なようです(ここらへんはよくわからん)
今後はスタークラフトというSF strategy game??というゲームに取り組むようです.
②General AI
今は,囲碁なら囲碁のAI,将棋なら将棋のAIとExpert AIしかありません.
Alpha碁は将棋を打つことが出来ませんから(笑)
なので,AIはヒトからはまだまだ遠い存在であると言わざるをえません.
Expertをたくさん集めて切り替えるという方法以外に,今後は人間のような色々出来るAIが次の目標のようです.
③臨床応用
最後は,ゲームから離れ現実世界の問題についてです.
例えば,診断やtreatment planの作成などをAIでやるというものです.
これには今回のAlpha碁で行われたような自分自身と何百万局も対決してデータを死ぬほど集めるということが出来ないという課題があります.
また,診断やtreatment planを良い,悪いと決めることがとても困難であるという問題もあります.
また,Deep Mind社のDemis HassabisさんはスマートフォンにDeep Mindのアルゴリズムを組み込み,個人のリクエストに深くこたえられるような装置を作っていこうとしているようです.これは実現するとすごく面白そうですね!Googleらしいし(笑)
Deep Mind社以外のAIとしては,Geometric Intelligenceという会社が作るAIも面白そうです.この会社はGary Marcusという神経科学者が始めた会社のようで,ヒトの子供の学び方を参考に,より少ないデータサンプルから学習できるAIを作成しているようです.これもすごく面白そう!やっぱりスパース性が大事なのかな?ちょっと調べてみよう.
最後に,Alpha碁はイセドルよりもものすごく多くの対局を行い学習しています.
それでもイセドルは第4戦で1勝することが出来ました.
この1勝は,イセドルが3連敗した碁を寝る時間も惜しんで「復碁」(あの一手がどうだったというように復習すること)し,たった3局からAlpha碁のことについて学習した成果だと思います.
このように現在のAIはとても多くのサンプルを使用しないと学習できませんが,人間はたったの3敗から多くのことを学べます.
さらに言えば,ヒトはたった1つの敗戦からでもとても多くのことを学ぶことが出来ると思っています.
この能力を実現しているのは「意識」であるとかいう話もあるようです・・・
こんな感じでAIからヒトの神経メカニズムについて考えることが出来るのも面白いなと思いました.
Brain doping
Natureにこんな記事が・・・
tDCSを使って,パフォーマンスを向上させる研究についての話です.
ここではスキージャンパーにtDCS(脳に電気を流す装置)をmotor cortexに打つと,ジャンプ力が70%,筋肉の協調性?が80%向上する研究を紹介しています.
また,tDCSをmotor cortexまたはtemporal cortexに打つことで知覚疲労が軽減し,一般人においてペダル漕ぎをShamでtDCSを打った被験者に比べて2分長く漕げるようになるようです.
このようなtDCSを使った能力向上は,薬のドーピングと違って使用しているかどうかがわからないので,"Brain doping"としてオリンピックでは気を付けて対策をしたほうが良さそうだとのことです.
ただ,やはりtDCSの効果は再現性に乏しく,効く人もいれば効かない人もいるし,効く日があれば効かない日もあるし,効果が逆に出ることなどもあるようで,まだまだ科学的に何が起こっているのかがわからないところがあるというのが現状の様です.
イセドルがアルファ碁に勝つ(第4戦)
世紀の勝負の第4戦.
イセドルが中押し勝ちしました!!!
研究室で少し涙が出そうになりました・・・
3連敗して,これは遥かな高みから人間を見下ろしているのでは・・・と思い始めましたが,人類の意地を見せてくれました.
対局後も夜通し「復碁」を行い(対局を振り返り復習すること),最善の一手を追求したようです.
3連勝したからアルファ碁の性能を下げたのか?と少し懐疑的に見てしまいましたが,一応会見でアルファ碁の作成者が否定していました.
今回の対戦ではdistributed版(パソコンをいっぱい並列にくっつけて演算処理する)のアルファ碁を使用しているようです.
stand alone版(一個のパソコンで演算処理する)もあるのですが,今回は使用しないようです.もちろんdistributed版のほうが強いからです.
また,会見でイセドルはアルファ碁の弱点を発見したとして,
①黒を持つ時のほうが弱い.
②妙手に対しての対応がよくないときがありバグみたいに感じた.
の2点を挙げていた.
この2点目に関して,今回のアルファ碁はエキスパートシステムのような専門的な知識(例えば,将棋では飛車角の価値が高いとかいう知識)を入れておらず,今回のDeep neural networkが様々なことに応用が可能だということが重要なのですが,記者の方から今日の対戦のようなバグが発生するというのは医療などに応用した場合に問題ではないか?という質問がありました.
これに対して,作成者は「アルファ碁はプロトタイプであり(アルファというのはβタイプとかを意識してなのか??と少し思った),バグがあるのはしょうがない.今回の対戦はそのようなアルファ碁の弱点を探すためのものである.さらに,今回は囲碁に特化した仕様である.医療応用の場合は,それ相応の対応をするので問題ない.」と回答していた.
今後はDNNが世界の様々な応用面に登場することは間違いなさそうである.
ただ,マシンパワーがめちゃくちゃ必要な問題を解決しないとなー・・・
さて,今日は第5戦!!
今日の対戦はアルファ碁が白を持った時のほうが強いということで,イセドルの希望でイセドルが黒,アルファ碁が白の対戦です!
黒白両方で勝てれば,これはもうイセドルの勝ちだと言っても過言ではありません.
そう考えると本当に人間は対応力がすごいのだなと思います.
今後の機械に必要なことは,1戦の負けから多くを学ぶということかもしれません.
機械は何千何百という失敗を重ねて初めて学ぶことが出来ますが,人間はたった1戦の負けから本当に多くのことを学ぶことが出来るような気がします.
世界トップ棋士イセドルがアルファ碁に負ける
世界トップの棋士であるイセドルがアルファ碁に負けた・・・
イセドルはヒカルの碁の高永夏(コヨンハ)のモデル.
日本最強で現在七冠達成に向けて十段戦を戦っている(初戦は完勝)井山九段はヒカルのモデル.
そして,アルファ碁は例えるなら楊海(ヤンハイ)さん.
というのも楊海さんはヒカルの碁の中で,神の一手はパソコンの中で生まれるという名言を残しています.
このイセドルは,つい最近井山に勝っている.
つまり!!ここ最近の戦績だけで評価すると(評価しちゃダメ)
アルファ碁>イセドル>井山となり,
楊海さん(中国)>高永夏(韓国)>ヒカル(日本)となります・・・
ヒカルの碁ファンとしてはなかなかショッキングな一日でした(笑)
自分でモチベーションを上げるためのNeurofeedback training
Cognitive Neurostimulation: Learning to Volitionally Sustain Ventral Tegmental Area Activation
http://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(16)00095-7
今週のNeuronに自分自信でモチベーションを上げるNeurofeedback trainingの研究が掲載されました.
Ventral Tegmental Area(VTA:腹側被蓋野)というドーパミンニューロンが存在し,ドーパミンを脳内に放出する脳領域の活動を上げるNeurofeedbackトレーニングのようです.
科学的妥当性を評価するためのコントロール群は,random feedback group, no feedback group, alternate neurofeedback group (nucleus accumbensの活動をフィードバック)の3グループを行っています.それぞれ20名弱なので100名弱の被験者に対して実験を行っています(@_@;)
一度VTAの活動をコントロールできるようになれば,フィードバックなしでもVTAを自分で活動させることが出来るようになるようです.
ドーパミン放出そのものを見ているわけではないので本当に自分からドーパミンを出せるようになっているかは不明なようですが,ドーパミンを出せている可能性は高そうです.