モデルナ製コロナワクチン接種をしてみた

2021年1月5日現在、アメリカではコロナワクチンの接種が始まっています。
研究室が病院にあることから、私もいち早くモデルナ製コロナワクチン接種をすることが出来ました。

今後、日本でも接種が始まったときの参考になると思い、その体験談を紹介します。

モデルナ製コロナワクチンは1か月の期間をあけて2回注射が必要なようで、今日が1回目、来月にもう1回する必要があるようです。

接種前にはアレルギーの有無を聞かれました。自分はアレルギーが無いので問題はありませんでしたが、これまでにほんの少数ですがアレルギー反応による副反応が確認されているそうです。

注射は利き手ではないほうの上腕三頭筋?のあたりにされました。当たり前ですが刺されるときの痛さは普通の注射の痛さでした(笑)
9時半頃に注射したのですが、1時間後くらいから注射されたところが筋肉痛のようにじんじんし始めて、その痛みが夜まで続いていますが、生活には全く問題ないくらいです(説明によると普通の反応)。
ちょっと頭が重いかなと感じますが、熱もなく問題ありません(ただの気のせい説)。

 

v-safeというweb pageで、これから毎週5週間くらい症状の報告を行い、今後のためのデータ集めに協力しています。また、2回目の接種後は3か月後、6か月後、12か月後に症状を報告するみたいです。

このデータで安全性がさらに確立されて、日本でのワクチン接種がスムーズに行くことを願っています。

J1 VISAの郵送更新について

COVID-19の騒ぎで、2020年3月19日よりアメリカ大使館によるビザ発給のための面接が停止されました。(2020年4月25日時点の情報です)
https://jp.usembassy.gov/ja/suspension-of-routine-visa-and-notarial-services-ja/

じゃあビザの発給が全く出来ないのかというとそうではありません。面接が必要ない郵送での発給は行われております。J1ビザも以下の条件を満たすのであれば郵送での「更新」が認められています。

(今回申請するJビザのプログラム及びSEVIS番号は前回発行されたものと同じでなければなりません。)

 

この騒ぎの直前まで、記憶が確かであればJ1ビザは郵送による「更新」が出来る要件の中に含まれていなかったと思うのですが、恐らくこの騒ぎで条件が少し緩和されたのでしょうか(2年前にJ1ビザを発給した時には郵送による「更新」が出来たと思うのですが、今回「更新」しようとしたときには含まれていませんでした。。。)。

 

この騒ぎで本当に郵送でビザの更新が出来るのか不安でしたが、無事更新することが出来ました。ネットを見ると郵送でのビザ更新に失敗したとか、余計に時間がかかったという記事が多かったのでそれも不安でしたが杞憂に終わりました。ちなみに更新の場合、SEVIS feeの再度支払いは必要ありませんでした。

 

 

ビザ更新の流れとしては、以下のように簡単でした(常に不安でしたが)。

・ビザの面接を予約する段階(DS160などを作成した後)で郵送での更新の設定

・パスポートや必要資料を送るために必要なパックが設定した住所に送られてくる

・パックの中に必要資料を入れて、郵便局に提出

・新しいビザが付いたパスポートが届くのを待つ(想像より早く1週間もかからずに届きました。ただ、個人差があると思います)

 

また、郵便局に提出した後も、荷物が大使館に届いたのか、ビザの更新がちゃんと認められるのかなどもネットから確認することが出来たので大分安心でした。

準備した資料なども書こうかと思いましたが、人ごとに条件は違いそうだし、間違った情報を提示してしまうのも良くないのでやめておきます。

基本的に以下の二つのサイトにただ従いました。補足資料に大学からの受け入れ許可証なども念のために入れておきました。

https://www.ustraveldocs.com/jp_jp/jp-niv-visarenew.asp

https://www.ustraveldocs.com/jp_jp/jp-niv-typej.asp

 

 

自分は今回、3月19日の便で日本に一時帰国し、3月24日にビザの面接を受ける予定でしたが、飛行機に乗る前日にこのニュースを聞きとても大慌てでした。というのも郵送で更新出来ると思っていなかったので、面接が再開されるのを待つか、3月中にボストンに戻る必要があると思っていたからです。実際その日中に郵送で更新できることを知り、面接の予約を取り消し、郵送に変更し、帰国を決意。そして無事更新することが出来ました。

こんな状況なので、4月頭にボストンに戻る予定でしたが、帰国の便が6月中旬になっています(笑)ボストンに戻ってもラボが開いていないので帰る意味が無いし、今や日本のほうが安全で日本の所属ラボはまだギリギリ少人数ですがラボが開いているので、研究環境的にも日本にいる方が効率が良いです。ただ、ただでさえ短い留学期間がどんどんと減っているのはもったいなくも感じているので、早く収束して欲しいですね。

Stay home, stay safe

ボールが止まって見える!?

Ready steady slow: action preparation slowsthe subjective passage of time

https://royalsocietypublishing.org/doi/full/10.1098/rspb.2012.1339?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

 

プロ野球選手が,ホームランを打った後に,ボールが止まって見えたといったという話逸話を聞いたことがある人も多いだろう。
この研究では運動準備を行うことで,時間の知覚が遅くなることを5つの実験を通して証明していく。

実験①:実験群は,白い円板が出ている時にはボタンを押しながら待ち,空の円板に変化したら,ボタンを離してスクリーンにタッチする。そして,待ち時間が前までのタスクよりも長かったか短かったかを報告させる。統制群では,白い円板が出ている時にはボタンを押さずに待ち,空の円板に変化したらボタンを押す。

その結果,実験群は統制群と比較して同じ時間白い円板が出ていたとしても,長かったと答える割合が高かった。つまり,スクリーンにタッチしようと準備していた群は待ち時間をより長く感じていた。

実験②:次に,運動ではなく一般的な認知の準備をしていてもこの時間の遅れが生じるのかを検証。この実験では白い円板の後にCかGの文字が出てきて,空の円板の後にどちらの文字が出てきたかを答え,そのあとに待ち時間が長かったかどうかを聞いた。統制群としては,CかGを答える部分を無しにしている。その結果,認知的な準備では時間知覚の遅れは生じなかった。

 

実験③:次に,本当に運動準備が時間知覚を遅くしているのであれば,運動準備の程度によって時間知覚の程度も変化するはずである。これを検証した。今度は,運動方向を二つ準備し,その方向を予測出来る場合(運動準備が出来る)と,予測できない場合場合(運動準備が出来ない)の2条件を準備し,時間知覚を比較した。すると,確かに運動準備が出来る条件(どちらの方向に手を伸ばせばよ良いかわかる条件)の方が時間知覚の遅れが大きかった。

 

実験④:次に,この時間知覚の遅れが,視覚知覚の速さが上がっているのか,単純にそのように感じただけなのかを検証した。ここでは,運動準備をすることによって視覚知覚のスピードが向上するかを検証した。白いもやもやが様々な周波数で点滅をする刺激を運動準備中に見せ,このちかちか点滅するスピードが速いか遅いかを聞いて,手を伸ばす条件と伸ばさない条件で比較した。すると,手を伸ばす条件(運動準備をする条件)で同じ周波数の刺激に対して,遅いと答える割合が多くなった。つまり,この結果は視覚知覚の速さが上がっている(物が遅く見える)ことを示唆する。

 

実験⑤:最後に,単に視覚知覚時間が遅くなっているのか,処理スピードが速くなっているのかを検証した。そのために,文字が素早く変化していく刺激の中で正しい刺激を見つける精度が向上するかを検証。文字列の中で,後半にターゲットが出てくるときに,運動準備群と統制群では有意に正答率が異なっていた。つまり,運動準備が進むほどに時間の知覚が遅くなり,ターゲットの文字をはっきりと読み取れるようになったということである。

 

この研究ではこれら5つの実験から,運動準備をすることによって確かに時間知覚が遅くなり,それは視覚知覚の時間処理のスピードを向上させていた。
つまり,プロ野球選手などが極限の集中力の中でバットを振る準備をしていることで,速いボールを知覚して捉える能力が向上しているというのは本当かもしれない。

 

こういう実験に実験を重ねて,様々な可能性を排除し,どういうメカニズムが働いているか真実を明らかにしていくスタイルはすごく格好良くて見習っていきたい。

海外学振までの道程(受け入れ先研究室の決定から渡米まで)

留学先研究室の探し方

とても大事な,留学先研究室の探し方を書くのを忘れていたので追記。意外と長くなったので,新しく作成しました。
まず,自分は英語も得意じゃなかったので海外留学とか全く視野にも入れていなかったのですが博士課程在学中にボスから「海外で修行してこい」と言われ,Princeton大学の先生を紹介してもらいました。

Princeton大学の先生はポスドクを探していたようで,連絡を取り合った後に「博士号を取得し,自分でグラントを取れたら行く」という約束をしました。しかし,博士号の取得に想像以上に時間が経ってしまい,当初とは状況が変わってしまいPrinceton大学の先生のところにはいけなくなってしまいました。ただ,すでに海外に行くことを前提に色々とグラントを応募していたこともあって,急遽他のラボを探すことに。その時に以前から論文を読んでいてとても興味のあったラボの幾つかにメールを送り,海外で行われる学会のついでに研究室訪問をお願いしました。
メールの中身は,以下のような感じでした。

  1. 自分の研究の紹介(論文を書いていた場合はその簡単な紹介)
  2. CVとその論文を添付
  3. 先生のどの論文に興味を持ったかを記述
  4. 学会に参加する日程と,その間に研究室訪問させてもらえないか?というお願い

幸い,2つのラボから快諾の返事をいただき,学会に合わせて,ラボで研究発表をさせてもらうことが出来ました。基本的には,その研究室のラボミーティングのような時間帯で発表させてもらうことになると思うので,発表の数日前までに自分の情報や発表に関する簡単なアブストラクトを送っておくと,相手がラボメンバーに周知するときの助けになると思います。

そんなこんなで,訪問後にもメールのやりとりを幾つかして,自分のグラントが取れたら言ってよいという確約とSkypeによる簡単に会話をしました。


最後に,留学を考え始めてから,実際に渡米するまでの簡単な時系列(研究室A:現在の受け入れ研究室,研究室B:前から受け入れをお願いしていた研究室)。

2016年5月:ボスから2017年4月から研究室Bで武者修行してこいとのメール。

2016年5月~2017年1月:海外学振に投稿,不採用。学振PDの面接候補。直接雇ってもらえないか交渉。ただ,論文の査読に想像以上に時間がかかり,2017年3月に卒業は出来なさそう(この時点で,渡米後に論文が通り次第,最終審査だけ受けに日本に帰ってくることも考える)。

2017年8月10日頃:初めて研究室Aにメールを送る(次の日には返事をもらう)。すぐに11月に研究室訪問をする約束。実はこの時は単に研究室訪問が目的(研究室Bに受け入れ先のお願いをしていたので)

2017年8月12日:研究室Bから,状況が変わったため受け入れることは出来ないというメールをもらう。

2017年8月20日:改めてメールで,研究室Aに,自分が応募しようとしているグラントの説明と,もしこのグラントが取れたら研究室に入れてもらえるかを交渉(4ページほどのResearch statementなるものを作成し添付)。Research statementは自分が行っている研究のバックグラウンドや自分の興味,やってきた研究の説明,今後の研究計画,などをまとめたもの。詳しく書きすぎず自分の興味や強みを相手に伝えるのが目的。Skypeでちょっと話せないかと言われて,8月29日にSkypeの約束を取り付ける。ただ,申請予定のグラントの提出期限がもうすぐで,相手のSupport letterが必要だったので,そのSkypeで簡単に会話をした後にすぐにSupport letterを書いてもらった。Skypeでは,自分がこれまでどんな研究をしてきたのか,これからどんな研究をしたいのか,あとは趣味などの他愛のない会話も少しした記憶があります。
ということで,2017年8月は怒涛のように過ぎ去り,現在の受け入れ研究室のSupport letterをいただきました(笑)。周りで海外留学している人もどこかのタイミングで直接受け入れ先に自腹で訪問してミーティングをしたりSkypeミーティングしている人ばかりでした。

2017年11月16日:研究室訪問。研究室メンバーの前で1時間程度の発表。そのあと,軽くミーティングしたり,ラボメンバーの研究の話などを聞く。

2018年11月末:応募していたグラントの採用通知が届き,正式の渡米決定(2018年4月から1年間だけれど,渡米は遅らせることが可能)。この時点で学振PDの面接は辞退することに,というのも学振PDの場合,海外での研究は2年間になるため(自分はもう少し長く海外にいたかった)。あと,卒業には3本の論文が必要だが,この時ファースト1本,セカンド1本,2本目のファースト論文の査読が難航し,2018年9月に博士号取得を目指しているが不安(笑)。

2018年3月初旬:2本目のファースト論文を投稿(こいつがスパッと通れば9月取得に希望が)。同時に2019年4月からの海外学振に応募。この時点で採用されたグラントの延期をお願いし,9月ごろには渡米予定と連絡。

2018年3月末:投稿中の論文からpeer reviewに回るとの連絡。

2018年4月:海外学振の申請書提出

2018年4月23日:投稿中の論文からRejectの連絡。ただし,reviewerのコメントに反論が出来そうだったのでAppealの準備をすることに。エディターにはすぐにAppealの準備をしたいと連絡し,Appealの方法を教えてもらう。Appealにはとても時間がかかるという噂もあり9月卒業に不安が・・・(というより博士号の予備審査は2,3か月前に準備をし始める必要があるので本気でヤバイ)

2018年5月:学振PDの申請書提出

2018年6月:電車の中で大阪大地震に被災

2018年7月:ビザの取得のために必要なDS2019(アメリカ滞在許可証)をもらうお願い(ビザは渡航許可証で,DS2019は滞在許可証です。)

2018年7月30日Appealを投稿。

2018年8月3日:海外学振から不採用の連絡

2018年8月7日Appealで覆らずreject決定。この時点で,今年度中の渡米に不安・・・,聞いたところ最悪2019年3月までに渡米すればOKとのこと。

2018年8月8日~24日:次の投稿先に投稿。Editor kickに合う。さらに次の投稿先に投稿。もう一回Editor kickに合う。ミーティングをして新しい解析を増やして再投稿することに決定。

2018年9月8日:投稿。

2018年9月17日:peer reviewerに回るとの連絡。

2018年9月19日:もはや猶予がなくなったので大学のボスに,現在の状況で博士号の審査を受けられるか相談。reviewの結果が良さそうなら予備審査にかけてあげると言われる。10月2週までに博士論文を7割完成させろと言われるが,現状から11月2週の先行会議を目指すことに(2月に最終審査になる日程)。博士論文を書き始める。

2018年9月24日:DS2019が今年の10月からになっていたが,開始日の前後1か月以内に渡米しないといけないらしいので,日程の変更をお願いし,2019年2月に渡米時期を変更。投稿中の論文がすんなりacceptされることを祈るしかない。ただ,この論文が上手くいかなかったとき用に,impact factorが低い論文誌へ現在並行して行っている研究を早急にまとめて投稿する準備を進める。

2018年10月12日:学振PD採用の連絡を受ける。ただし,現在採用されている助成金と被ってしまうため,学振PDは採用辞退。条件は学振PDの方が良いですが,流石に渡米時期を待ってもらっておいて,採用予定の助成金を断るのは人として終わっていると判断。

2018年10月24日:2か月以内のMajor revisionを勝ち取る。

2018年11月5日:並行して進めていた論文のsubmit完了。

2018年11月24日:論文の修正が終わり,再投稿。

2018年11月25日:博士論文完成。予備審査が12月18日に決定。

2018年12月12日:博士論文草稿を副査の先生方に届ける。

2018年12月19日:再投稿した論文に関してEditorが変更するとのメール。reviewersからの返事はもう受け取ったので,現在話し合ってるとのこと。クリスマスの休みを挟むから決定はおそらく年明けになるとのこと(こっちはギリギリの綱渡りをしているのにぐぬぬ状態)。
2019年1月9日:ようやく再投稿の結果が返ってくる。1か月以内のrevision。一人のreviewerがまだ渋っていたので,大学のボスからはまだ5分5分だねと言われる。ただし,この時点で公聴会の日程が2月18日に決定。DS2019の関係上,2月中に渡米しないといけないのでギリギリにはなる。

2019年1月18日:論文の再投稿。もうここから引き返せないので,飛行機の予約と海外留学保険に入る。

2019年2月13日:ほぼacceptのminor revisionの連絡。ほぼ卒業確定。一安心。公聴会の準備も並行して進める。

2019年2月16日:並行して投稿していた別の論文のreview結果が返ってくる。おそらく通せそうな感じだったが,もう一つの論文がほぼacceptになったので,レベルを上げて投稿しなおすことに。

2019年2月17日:Minor revisionの修正を完了し,再投稿。

2019年2月18日公聴会

2019年2月21日:引っ越し。

2019年2月22日:渡米(笑)。

2019年3月15日:正式にacceptの連絡。

2019年4月:海外学振に応募。

2019年8月:面接候補に決定。

2019年9月:日本にて面接。

2019年10月:採用決定。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

触覚VR!!

Skin-integrated wireless haptic interfaces for virtual and augmented reality

www.nature.com

 

ついにキタ!って感じの技術。
これまでVR,ARは視覚と聴覚を対象として発達してきた。この研究では触覚を再現できるような装置の開発に成功した。

これまでの研究では,ワイヤー付きだったり,電気刺激によって触覚を再現していたが,電力などのコントロールが精密に出来なかったようだ。今回開発に成功した装置はワイヤレスでモーターのようなもので圧力をかけているようだ。そして,柔らかくてテープのような形で皮膚に貼ることが出来る様だ。全くの専門外なので,これまでの装置に比べてどこがどうすごいのかわからないけど,これまでのより質的に素晴らしいって書いてある(笑)
"This class of technology is qualitatively distinguished in form and function over previous attempts at programmable haptic interfaces to the body."

Fig4ではこの装置を使った実例がいくつか挙げられている。
1:画面にタッチした感触が相手に伝わる

おばあちゃんとテレビ電話している子供が,画面に映っているおばあちゃんにタッチするとその感覚がおばあちゃんがつけているデバイスに伝わる。

2:前腕切断者への感覚フィードバック

ロボットアームで作られた前腕が何かを保持した感触を,上腕で感じるようにフィードバックすることで,持った感触をフィードバックする。持った感覚が上腕で感じるってどんな感じなんやろう・・・(笑)
3:この装置を体の至る所につけて,格闘ゲーム
これは言わずもがなで,ゲーム中で殴られたりした感覚を身体全身で感じることが出来る(笑)。ただ,残念ながら?これは殴られる感触しか受けることが出来ないので,切られたり,かめはめ波を受けた感覚をフィードバックされるのは難しいかもしれない(笑)

個人的には何かスポーツに応用できないかなーって考えてみたけど,いまいち思い浮かばないな( ;∀;)

直感はどのように発達するのか?

Developing Intuition: Neural Correlates of Cognitive-SkillLearning in Caudate Nucleus

www.jneurosci.org

 

2011年のScienceの論文で,プロ棋士は直感的な一手を指す時にcaudate headの活動があり,アマチュア棋士では無かったという結果を示していた。
また,このような直感的な一手は,長い訓練を積むことで発達すると考えられてきたが,直感的な一手を指せるようになるに伴ってこのcaudate headの活動も徐々にみられるようになるのだろうか?

この論文では,初心者に将棋よりも簡単なボードゲーム(5x5のミニ将棋)を15週間訓練させることで,直感的な一手を指すことが出来るようになり,その一手を指す時にcaudate headの活動が見られるようになったとのこと。更に,このcaudate headの活動が強い人ほどperformanceが高かったようだ。

実験では,20人の将棋初心者(本当に初心者)が5x5のミニ将棋を15週間訓練し(主にコンピュータとの対戦),その前後での脳活動をfMRIで計測。15週のうちの2,3週目に最初の計測を,14,15週目に後の計測をしている。fMRIの中での課題はScienceの論文のものとほぼ同じ。

ちなみに,前に投稿したのも含めて将棋論文では常にチェスとの違いを詳しく説明している。多分reviewerから何で将棋なのかっていつも聞かれてきたんだろうな(笑)。あと,この訓練をちゃんとしてもらうために,1か月につき2万円の謝金と,実験の最後に行われるトーナメントでベスト5に入れば10万円,10位までに入れば5万円を報酬としてるのはすごい(笑)。ぜひ参加したかった・・・

その結果,まず最初の測定時と最後の測定時で直感的な一手の正答率は全被験者で向上した(各被験者のトレーニング時間は37時間から107時間と幅は有り)。ただ,工場率がトレーニング時間やIQなどとは相関していなかったらしい・・・

そして,予想通り最初の測定時にはcaudate headの活動はほとんどなかったが,最後の測定時にはcaudate headの活動は高くなっていた。更にこの最後の測定時のcaudate headの活動は成績の向上率と有意に相関していた。caudate headのvolumeに変化があったかを調査したが,volumeには変化がなかったようだ。ただ,最初の計測時のcaudate headのvolumeは有意に最初の正答率と相関していた。

 

 

ということで,初心者でも訓練することでcaudate headを使った直感的な一手を生み出すことが出来るようになるようです。

気になるのは,Scienceの論文ではcaudate headの活動が高い人ほど正答率も高かったが,同じ被験者のトライアル間での違いもあるのだろうか?例えば,ある試行では直感的に打ててcaudate headが活動したり,ある試行では直感的に打てずcaudate headが活動しなかったり。
後は,caudate headはどのような計算を行っているのか?これは直感に関する計算モデルが無いので難しい問題かと思う(実はあるかもしれないけど)。どうやったら直感を数式で表すことが出来るだろう?

なんとなくだけど,ベイズ的に考えたら,経験によって作られた事前分布に基づいた意思決定が直感みたいなものかなという気はする。2009年のScienceの論文で熟考と直感による意思決定を比較した研究ではcaudate headの活動は無かったが,あれはその課題に関する事前分布がまだ形成されていない状態での意思決定だから活動しなかったのかな?

瞬時のoffenceとdiffenceの判断に関する神経メカニズム

Neural encoding of opposing strategy values in anterior and posterior cingulate cortex

www.nature.com

 

ヒトは瞬時に攻めるか,守るかという選択を行っている。

この研究では,熟考することなく瞬時の判断において攻めるのか守るのかを判断してるのはどこの脳領域なのかということを,将棋を題材にして調査している。
その結果,the rostral anterior cingulate cortex(吻側前帯状皮質) and the posterior cingulate cortex(後部帯状皮質)と呼ばれる脳領域が攻めと守りの戦略価値をそれぞれ表現していることが明らかになった。そしてthe dorsolateral prefrontal cortex(背外側前頭前野)がその二つ価値を比較していることも明らかとなった。

将棋は,チェスに比べて攻めと守りがはっきりしているのが今回の研究の対象となった理由だそうです(笑)。そして,見る人が見れば攻めなのか守りなのかは明らかで,この論文内では言及を避けています(ちょっと気になる・・・)。

実験課題としては,実験条件と統制条件に分かれ,実験条件では盤面を4秒見せた後に,2秒で攻めか守りの2択を行います。統制条件では,攻めか守りを指示された後に盤面を4秒間見せて,2秒間で具体的な手を4つのなかから選択します。
ちなみに実験条件において攻めと守りの正答率は有意に攻めの方が高かったようです(笑)。これはアマチュア将棋棋士が攻めを好んでいるからだと主張しています(結構この部分に関しても細かい解析をしてますがここではスキップ)。
正答率は,その盤面においてartificial intelligence (AI)によって計算された評価が高い方(攻めか守り)が正解と定義しています(正解の一手が攻めということと,攻めを選んだことは必ずしも一致しない気もするけど・・・)。

実験条件と統制条件でfMRIの脳活動を比較すると,以下のようなことが分かったようです。実験条件>統制条件の脳活動だけを見てるけど,逆の解釈も気になるなー(table1には載っていてpremotorやDLPFCなどが実験条件で活動が弱い),と思ったら統制>実験の脳活動は攻めの価値と守りの価値との相関は見られなかったとResultsの最後にちらっとのってた。

  1. 吻側前帯状皮質は守りを選択したときのdeactivationが攻めに比べて弱い
  2. 後部帯状皮質は攻めを選択したときに守りを選択したときより活動する
  3. 背外側前頭前野は攻めでも守りでも活動する
  4. 背外側側頭皮質と海馬は,攻守には関係なく間違えた時に活動する

次に,攻めの価値と守りの価値をAIによって計算させ,その価値に伴って活動する脳領域を探った(次の一手の中で,AIによって価値の高い一手を上から3つ攻めと守りでそれぞれで選び,その価値の平均値で攻めと守りの価値を計算)。

そうすると,守りの価値は吻側前帯状皮質との相関が高く,攻めの価値は後部帯状皮質との相関が高かった。また,背外側前頭前野と背外側側頭皮質と海馬は選んだ価値と選ばなかった価値の差分との相関が高かった。また,戦略の選択と戦略の価値の相関は高いため(戦略の価値が高かった方が選択されやすい),どちらの影響なのかを明らかにするために,攻めも守りも中くらいの価値の試行を取ってきて,攻めを選択した場合と守りを選択した場合でそれぞれの脳活動の違いを調査したところ,有意な差は確認できなかった。つまり,上記に示した脳活動は戦略の選択ではなく,戦略の価値を表現していることが明らかになった。

つまり,単純に考えると吻側前帯状皮質で守りの価値を表現し,後部帯状皮質で攻めの価値を表現し,その差分がDLPFCで表現されていることで一手の選択に繋がっていると考えられる。